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「第26回 こんぴら歌舞伎」観劇 [┣演劇]

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この桜は、先日、新宿御苑で撮影した琴平(里桜)。
ここ、琴平の桜は、ほぼ終わりという感じだが、こんぴら大歌舞伎の桜(役者)たちは、今を盛りと咲き誇っていた。

第二十六回 四国こんぴら歌舞伎大芝居

片岡仁左衛門監修
源平布引滝
「義賢最期」 一幕

木曽義賢(片岡愛之助)は、木曽義仲の父に当たる。
今は平家の天下。義賢は、後妻の葵御前(上村吉弥)と、先妻の娘待宵姫(中村壱太郎)とひっそり暮らしている。
そこへ、ここに奉公している折平(中村翫雀)の妻と名乗る小万(市川亀治郎)が息子を連れて現れる。折平と恋仲である待宵姫はショックを受ける。
一方、義賢は、折平が実は源氏の一族多田行綱ではないかと気づき、平家打倒の本心を打ち明ける。折平も正体を明かし、二人は後白河法皇から賜った源氏の白旗に一族の再興を誓う。
そこへ清盛の使者が、後白河法皇の白旗がここにあるのではないか、と詮議に現れる。その一人、長田末宗が兄・義朝の敵と知り、義賢は討ち取るのだが、もう一人の高橋判官を折平が簡単に取り逃がしてしまうので、早晩、討手がやってくるだろう、と義賢は思う。
そこで、葵御前、待宵姫を逃がした上で、白旗も小万に預けて、たった一人で義賢は討手と戦って壮絶な最期を遂げる。

襖を二枚、垂直に立てた上にもう一枚襖を横に乗せ、その上に乗って見得を切ったところで、襖が横倒しになるところ(戸襖倒し)から、「仏倒し」で死ぬところまでが超見せ場。
仏倒しというのは、屋敷の上から、前のめりになって庭先の方に倒れこむというもので、庭から上がる小階段に仕掛けをして、そこがスプリングとして緩衝材になるのだと思うが、それにしたって、まったく痛くないことはなさそうな仕掛けだ。
この見せ場に至る立ちまわりなど、ものすごい荒事を演じる愛之助が意外に似合っていて、また、監修の仁左衛門から芸を受け継いでいるな、と思わせる部分も多く、よい芝居だった。
戸襖倒しも、金丸座の大きさにちょうど合う迫力で、客席は沸きに沸いていた。

折平が高橋判官をちゃんと仕留めていたらこんなことにはならなかったのに、その折平(しかも妻子あり)に娘を託して自分は死んでいく、なんて義賢、かわいそうすぎる…
そして折平の本当の妻の小万は、なかなか腕も立つし、最後は白旗を託されて一人去っていく女闘士なのだが、これが、実にいい女なのだった。(報われないけど…)

岡村柿紅作
「棒しばり」 長唄囃子連中

狂言の「棒縛」を舞踊化した作品。
曽根松兵衛(中村亀鶴)は、外出することになった時、一計を案じて、太郎冠者(片岡愛之助)を呼ぶ。そして二人は相談して棒の名手である次郎冠者(中村翫雀)を棒に縛りつけることに成功する。
その上で、松兵衛は、太郎冠者も後ろ手に括って、安心して出て行く。
留守のたびに、この二人が、こっそりと酒を飲んでしまうのが心配だったのだ。
両手を棒に縛りつけられた次郎冠者と、後ろ手に縛られた太郎冠者が、協力して結局酒を飲んでしまい、楽しくなって、そのままの姿で舞を舞うのが見せ場。

翫雀の上手さが光った。
愛之助も義賢とはまったく違う狂言の三枚目を見事に演じ、舞も立派なのだが、ここは、翫雀の年の功が冴えた。
きっとものすごく難しい舞踊だと思うのだが、(一差し舞うたびに、後見が棒に括った手ぬぐいを縛り直していた)それをものすごく楽しそうに踊っている。
素晴らしかった。
日本版のボードヴィルショーだな、これは。

木村富子作
澤瀉十種の内
「浮世風呂」 常盤津連中

三助の政吉(市川亀治郎)が準備をしていると、なめくじ(中村壱太郎)が現れて口説こうとする。が、塩を撒かれて退治される。そして若者たちが現れるが、それをあしらって桶の山に登ってポーズ!というナンセンスというか面白い舞踊劇。

なめくじは、着物の上に「なめくじ」と染め抜かれている上に、髪の上に触覚のようなものがついていて、姿は美女なのにこっけい。
亀治郎の三助は、いせいのいい若者にしては、ちょっと足が細くて、その細さにばかり目が行ってしまった。日本舞踊はよくわからないのだが、踊りは良かったんじゃないかなー、たぶん。

 

猿之助四十八撰の内
通し狂言 「敵討天下茶屋聚」 三幕
安達元右衛門(市川亀治郎)という小悪党を主人公とする物語。
本当の悪党である、東間(片岡愛之助)によって父を騙し討ちにされた早瀬兄弟に、元右衛門は仕えている。が、酒癖の悪い元右衛門は、禁酒の誓いをしていたが、東間の中間、腕助(市川段一郎)に無理やり酒を口に注ぎこまれ、泥酔してしまう。それを兄と主人に見つかって勘当されてしまう。
その後、兄の弥助(中村翫雀)は、早瀬兄弟の世話をしながら暮らしていた。そこへ、物乞いに来た按摩が元右衛門だった。
そんなところへ奪われた紀貫之の色紙が見つかったという知らせが入る。が、買い戻す金はない。これを聞いた早瀬兄の妻、染の井(上村吉弥)が身売りをして、そのお金を払おうということになる。こういう話を兄に隠された戸棚の中で聞いていた元右衛門は、何の力にもなれない自分を悔みつつ家を出て行ったが、すぐに取って返し、兄を斬り殺して、身売りの手付金を奪う。そしてちょうどそこへ帰宅した早瀬兄の伊織(中村亀鶴)の足に斬りつけて逃げ去るのだった。
伊織はこの傷がもとで歩けなくなる。一時眼を患っていた弟の源次郎(尾上右近)は回復したが、すっかり落ちぶれて今は乞食頭伝吉の世話になっている。
そこへ現れた腕助と元右衛門。元右衛門は今では東間の手下だった。そして、東間も含めた三人で伊織を返り討ちにしてしまう。
兄を亡くした源次郎は、偶然、かつて早瀬家の恩を受けたという幸右衛門(嵐橘三郎)に会い、許嫁の葉末(中村壱太郎)とも再会する。そして、彼らは、敵の腕助を捕まえることに成功する。
腕助は改心して、源次郎の仲間になる。
そこへ現れた元右衛門と、大立ち回りとなるが、本来は弱い元右衛門、あっさりと斬られてしまう。
こうして、三人は、東間を天下茶屋で待ち受ける。
執権片岡酒造頭(市川亀治郎/二役)が、この敵討は、淀君の許可も得ていると言い、一同は東間を討ち果たすのだった。

歌舞伎に時々出てくるパターンで、誰が主人公なんだか、誰が悪人なんだかよくわからない。
これを市川猿之助がうまく整理して、今回の舞台に仕上げている。
冒頭に登場する、編み笠をかぶった東間ともう一人の侍を色々な人が、人違いする、という部分が、最後にその相手である片岡酒造頭が意味をもって出てくるという設定になっている。と同時に、悪いヤツだし救いがないが、その行動から目が離せない元右衛門という魅力的な主人公が、ラストシーンを迎えずにあっけなく死んでしまい、正しいが魅力に欠けるメンバーによる敵討のシーンがその後に展開する、しかも本当の悪である東間の犯罪は冒頭で語られるだけなので、どうにもこうにも盛り上がらない…という設定も、元右衛門を演じた役者が、別の役で再び登場することで、ラストシーンが大団円的に終結できる。
部分的には面白いが、全体を通して見ると様々な矛盾点があって通し上演できない作品も、ちょっとした工夫で生き返る典型のような気がする。
そして、筋書き(プログラム)の中で、亀治郎丈が語っているように、こういう作品が成功すれば、こんぴら歌舞伎のレパートリーも広がるし、ひいては、現在ガラコンサート状態が普通になっている歌舞伎座公演も、違う方向性が見えてくるのではないか、と思う。

住吉境内の場は、亀治郎の独壇場。とにかく楽しかった。
金丸座の客席の平場を縦横無尽に逃げ回り、二階席に梯子で昇り、そこから飛び降りるなど、本当に沸かせた。そのわりに、あっさり死ぬ風情も可愛くていい。
立敵を凄味と色気で演じた愛之助、途中で殺されるものの、それまでの和事の演技で引きつけた翫雀、短い出番で二枚目を印象付けた亀鶴、と全体のバランスもよかった。
また、腕助を演じた、市川段一郎の上手さも光っていた。

最後に、この作品が先ほど書いたような矛盾を孕んだのは、作者に問題があるわけではない。
四世大谷友右衛門が、自分の演じる「端敵」安達元右衛門の役を膨らませて演じて評判を取ってから、そういう形での上演がスタンダードになったのだそうだ。


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コメント 2

★とろりん★

夜野さま、

あの小さな芝居小屋で仏倒し!!大迫力でしたでしょうね☆
猿之助丈の相手役としてなめくじを踊っていた
亀ちゃんも、ついに三吉を踊るようになったのですね…(感涙)。

金丸座は役者さんと見物の距離が近いのが素敵ですよね。
私も久々に行きたくなってきました♪
by ★とろりん★ (2010-05-08 12:08) 

夜野愉美

★とろりん★さま
戸襖倒しも仏倒しも大迫力でした!
そして、亀治郎さんは、なめくじを踊っていたのですねぇ~♪今回の壱太郎さんのなめくじもとても美しくて素敵でした!
来年は、金丸座も豪華メンバーになるかも・・・ですね!!!
by 夜野愉美 (2010-05-09 20:44) 

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