So-net無料ブログ作成

「エレファント・ソング」観劇 [┣演劇]

「エレファント・ソング」

作:ニコラス・ビヨン
翻訳:吉原豊司
演出:扇田拓也

美術:内山勉
照明:桜井真澄
照明操作:松本由美
音響:井出比呂之
衣裳:樋口藍
舞台監督:小島とら
制作担当:栗原暢隆
プロデューサー:名取敏行
製作:名取事務所

とある精神病院の医師の診察室を舞台にしたサスペンス。

めったにここにはやってこない院長、グリーンバーグ(藤田宗久)がやってきて、看護師のミス・ピーターソン(安藤みどり)は緊張を強いられている。
この部屋の主、医師のジェームス・ローレンスが失踪した件について、理由を知っていると思われる患者、マイケル(佐川和正)にインタビューするために、グリーンバーグはやってきた。が、マイケルはとても特殊な患者らしい。ピーターソンは、院長に何度も警告するが、彼女の見た目(かなりのおデブさんらしい)が災いしてか、あまり効果を発揮していない。
連れてこられたマイケルは、院長を自分のペースに巻き込み、ローレンス医師を殺してロッカーに遺棄したとか、彼とはホモ・セクシュアルの関係だったとか、本当か嘘かわからない言葉で院長を翻弄する。挙句は、ローレンス医師が幼児性愛者であったと告発する。
院長は、そんなマイケルを脅したりすかしたりしながら、自分の優位を崩さない範囲で信頼関係を作ることに成功する。そして、カルテを見ようとするとマイケルが過剰に反応することを利用して、彼から様々な話を聞き出す。
彼が、世界的に有名なオペラ歌手、アマンダ・セント-ジェームスの一人息子であること。彼女はある男と24時間だけ恋をして、その結果、マイケルを産んだこと。彼が8歳の時、一度だけ父親の住むアフリカに行ったこと。父に会いたかったから。そこで、父はマイケルをサファリに連れ出した。一頭のゾウを父が撃ち殺し、それが彼の生涯のトラウマとなった。
帰国したマイケルに、母は、ゾウのぬいぐるみをプレゼントし、彼のためだけに『エレファント・ソング』という数え歌を歌ってくれた。
それは、マイケルに対する唯一の母親らしい行動だった。
マイケルは、思春期には地中海クラブで船旅を楽しみ、その際、幼児性愛者(年齢的には少年愛かも[exclamation&question])らに性的暴行を受けていた。そして、現在、彼はゲイを自覚している。
その事件の少しあとに、マイケルは母親を亡くしている。コンサートで失敗し、自殺を図った母は、マイケルが見つけた時はまだ生きていた。しかし、彼女のダイイングメッセージを聞いたマイケルは、彼女を救うための手段は取らず、彼女のそばでエレファント・ソングを歌い続け、28になったところで、母は死んだ。母を見殺しにしたマイケルの態度が問題になり、彼は、精神病院へと送られることになった。そして、今も彼は精神病院で暮らしている。
担当医師は何人も変わった。そして、失踪したローレンス医師は、マイケルを愛していると言った。マイケルは初めて、心を開いた。しかし、彼は、ベッドへ誘うマイケルを拒絶した。患者と担当医師だったからか、彼への愛を性愛を含めて考えることができかなったからか…は、わからない。
そんなローレンス医師のところに、彼のおばさん(伯母か叔母かは不明)が倒れたという連絡が入った。ローレンスは、慌てて出発した。マイケルに院長宛のメモを渡して。つまり、ローレンスの失踪に事件性はなかったのだ、ということが、ラスト付近でようやく明らかになる。

しかし、それは、マイケルの心に大きな傷を残している。
マイケルとジェームス(ローレンス医師)、二人だけの心地よい世界。いつだって、ジェームスにとって一番大切なのはマイケルのはずだった。精神病棟に囚われたマイケルにとって、それが世界のすべてだった。
ジェームスには、もちろん、それ以外の世界が存在する。
しかし、治療なのか、面接なのかはわからないが、マイケルをこの部屋に入れている時は、常に、マイケルだけがそこに存在していた。
そんな中、緊急事態ということで、診察室に繋がった電話。
ジェームスは、マイケルの目の前で取り乱し、彼との面接時間を切り上げて、倒れたおばのところへ向かおうとする。そして、マイケルにメモを託す。
それは、マイケルへの信頼にほかならないのだが、マイケルが求めているのは、信頼ではなかった。

自殺を図った母の最期の言葉は、「音を3つ外した」だった。
死を目前にして、たったひとりの息子を前に、彼女は自分の歌のことしか考えていなかった。

愛されたかった。
そのマイケルの純粋な思いは、こうして次々に裏切られる。
世の中、そんなものなのだが、無条件に愛された経験を持たない、傷つきやすい彼の魂は、ジェームスが去ったことで、最後の希望を失う。
院長を使って、マイケルは、大芝居を打つ。マイケルの目的、それは、すべてを話す代わりに得られるチョコレートだった。彼はチョコレートアレルギーだったのだ。周到な計画の果てに訪れる突然の幕切れ。

でも、本当に悲しいのは、看護師のミス・ピーターソンも、マイケルをとても大切に思っていることを、マイケルが完全に無視していることだったりする。彼女の愛は、母親の愛と言っていいものだったが、マイケルには伝わらなかった。
彼女が醜く太っていて、下品で、独身だったから。そして、マイケルはゲイだったから。自分を性的な目で見る(マイケルはそう信じている)中年女に耐えられなかったのだ。

圧倒された。パズルのように、作られた心理劇。でも、決してゲームのような軽さはない。
すごく面白かった。こんな演劇が上演されているカナダが羨ましい[黒ハート]


nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:演劇

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1