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「屠殺人ブッチャー」観劇 [┣演劇]

「屠殺人 ブッチャー


作:ニコラス・ビヨン
翻訳:吉原豊司
演出:小笠原響


美術:内山勉
照明:松井真澄
照明操作:松本由美
音響:井出比呂之
音響操作:坂本柚季
衣裳:樋口藍
演出助手:杉林健生
舞台監督:村田明
制作担当:栗原暢隆、松井伸子
著作権:GARY GODDARD AGENCY
プロデューサー:名取敏行
主催:名取事務所


3月に大感動した「エレファント・ソング」の作者、ニコラス・ビヨンの作品を再び上演すると聞き、行ってきました。


トロントあたりの警察署。口をきこうとしない老人(軍服着用)をめぐって、警察官と弁護士が押し問答をしているところから始まる。
クリスマスイブの夜。セットに小さなクリスマスツリー。これは、「エレファント・ソング」にも登場したツリーじゃないかしら[exclamation&question]
警官(斉藤淳)が言うには、男(高山春夫)はチンピラ二人がここに連れて来たのだが、その首に奇妙な工具が掛けられていて、その先に、弁護士ハミルトン・バーンズ(佐川和正)の名刺が付いていたのだという。その奇妙な工具は、肉屋が塊肉を切るのに使うものだという。
男のために、今、どうやら彼の母国語らしいラヴィニア語の通訳を呼んでいるので、それまで待ってほしいと言う警官に、弁護士は、この人に面識はないのだから、帰してほしいと言い、押し問答になる。警官は強引な男で、ハミルトンに、自分の娘のためにサンタクロースになって返事をしてほしいとか、無茶振りをしてくる。
そうこうするうちに、通訳の女、エレーナ(森尾舞)がやってくる。ケガをしているらしい男の手当てをし、自分の本業は看護師だと言う。男は拷問を受け、両足の爪はすべて剥がされていた。エレーナは、男の軍服はラヴィニア軍の大将のものだと言い、彼の名前をグーグルで検索するように、と言い出す。
すごいな、現代劇。グーグル検索だよ。
ラヴィニアが崩壊した後、軍事政権の首謀者たちは世界に亡命した。軍事政権下で弾圧された人々は、彼らを捜し出し、リンチにかけていた。最後は必ず「処刑」まで行うリンチ。なぜ、彼らは、この男、ヨセフ・ズブリーロヴォを解放したのか。
検索の結果、PC上にあらわれた現役当時のズブリーロヴォ大将の写真は、現在の彼からは想像できないもので、むしろ、弁護士のバーンズに似ていた。その写真を目にしたバーンズは、ようやく、認める。自分が、ズブリーロヴォの息子、マルコであることを。
ここで、エレーナが豹変する。
三人を人質として拘束したのだ。家族思いの警察官の家に仲間を待機させ、彼の反応次第では、家族を殺す、と脅す。
その状況で、エレーナは、ズブリーロヴォに、彼の行った最も卑劣で残酷な犯罪を語らせる。彼はラヴィニア語しかできないから、息子に通訳させる、という残酷さで。


か弱い女性が、大の男を拘束し、勝手に私的な裁判を始める。巻き込まれた弁護士は、法に照らし、理性に訴え、なんとか非道を止めようとする。が、深い憎しみの前には、人間の作った法など、なんの役にも立たない。弁護士は、自分の信念を曲げ、無力感の中、女の言うままにリンチに加担する。
これは、そう、「死と乙女」のパターンだ…と途中で気づいた。
いたたまれない。そうだ、償うことのできない罪はあるのだ、という気になる。


劇中、ラヴィニアという架空の国の公用語、ラヴィニア語(言語学者が創作したとのこと)が使用される。我々観客が、唯一、これは「ありがとう」という意味なんだな、と前後の文脈から理解した「ヴォーラ」という単語。その、あまりにも残酷な使い方を知って、戦慄した。また、愛称の「公爵夫人」から、つい、既婚者の婦人を想像していたのが、そうではなかった衝撃もハンパではなかった。
ある意味、「死と乙女」以上の痛みとやりきれなさが、(休憩がない分)怒濤のように押し寄せ、終演後、しばらく立ち上がることもできなかった。


つらい物語だけれど、演劇として見事な作品だった。
また、森尾舞という女優の持つエネルギーの大きさに感動したし、日本にはなかなかいないタイプの女優だと思った。
そして、見事に観客を騙し、最後のパズルのピースをはめてくれた斉藤淳のトリッキーな役作りには、感服。高山春夫は、ラヴィニア語の長台詞、意味はわからないのに素晴らしかった。
そして、この復讐の連鎖は、間違いなくここで終わるだろう、と確信させる佐川和正の的確な役作り、それによって、ラストの風景が大きく変化したことは、特筆したい。


再演してほしいから、すべては書かない。本当に見事な舞台だった。まだ半年しか経ってないけど、今年ナンバーワンかもっ[グッド(上向き矢印)]


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