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宝塚雪組東京公演「幕末太陽傳」観劇 [┣宝塚観劇]

かんぽ生命ドリームシアター
ミュージカル・コメディ
「幕末太陽傳」
~原作 映画「幕末太陽傳」(C)日活株式会社
監督/川島雄三 脚本/田中啓一、川島雄三、今村昌平~


脚本・演出:小柳奈穂子
作曲・編曲:手島恭子
音楽指揮:寺嶋昌夫
振付:花柳寿楽、若央りさ
殺陣:清家三彦
装置:大橋泰弘
衣装:加藤真美
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
小道具:増田恭兵
歌唱指導:山口正義
三味線指導:今藤和歌由
演出助手:栗田優香
装置補:稲生英介
舞台進行:庄司哲久


早霧せいな&咲妃みゆコンビの退団公演は、落語を題材とした古い日活映画を原作にした「幕末太陽傳」。この意外すぎる作品で、トップコンビは鮮やかに宝塚を去って行った。


脚本・演出は、現在、劇団の中で最も信頼できる演出家の一人である小柳奈穂子先生。
思えば、このコンビの大劇場お披露目公演も、小柳先生の「ルパン三世」、以来、雪組は、5作連続稼働率100%超という記録を達成する人気組に成長したのだった。そんな小柳先生の脚本・演出による、サヨナラ公演は、決して守りに入るのではなく、新しい宝塚の可能性を示す「楽しい」公演だった。


東海道五十三次、お江戸日本橋を出て一番最初の宿は品川。しかし、日本橋から品川なら江戸時代でも数時間で踏破できてしまう。こんな中途半端な場所にある宿に泊まる人々は、もちろん旅人ではない。
ここ、品川の宿には、北の吉原と並ぶ、でっかい歓楽街があった。 


品川-3.jpg以前、東海道五十三次を歩くイベントに参加した時、品川宿にも立ち寄りました。こちらが、土蔵相模の跡地。現在は普通の民家(マンション)になっていて、立て看板だけが残っています。というわけで、看板だけを撮影してきました。


 「土蔵相模跡」
 旅籠屋を営む相模屋は外壁が土蔵のような海鼠壁だったので、「土蔵相模」と呼ばれていました。1862(文久2)年、品川御殿山の英国公使館建設に際して、攘夷論者の高杉晋作や久坂玄瑞らは、この土蔵相模で密議をこらし、同年12月12日夜半に焼き討ちを実行しました。幕末の歴史の舞台となったところです。


と書いてあります。


冒頭のナレーションでも説明されている通り、ちょっと歩くと京浜国道。シンゴジラが、上陸し、崩壊した、八ツ山橋からちょっと行った辺り。江戸時代は、坂を下りたら海が広がっていたとか。


やつやまばし.jpgそんな場所に、旅籠屋、土蔵相模はあった。


ちなみに、映画「幕末太陽傳」は、「居残り佐平次」「品川心中」「三枚起請」「お見立て」などの古典落語が原作になっているとか。
実は、「居残り佐平次」は三遊亭圓生の、「品川心中」は古今亭志ん生の得意の噺であったとか。
なんだか、ゆうひさんの次回公演のことも思い起こしてしまいますね。私だけ[exclamation&question]


胸を病んだ佐平次(早霧せいな)は、養生のために、この土蔵相模への居残りを決行する。「居残り」というのは、宿代を払えないのでチェックアウトできない宿泊客のことらしい。
持ち前の機転で、相模屋の主人や奉公人の心を掴んで、見世で起きるトラブルもただちに解決、すぐに「頼りになる」存在になっていく。
相模屋には、たくさんの女郎がいたが、中でも、おそめ(咲妃みゆ)と、こはる(星乃あんり)の二人が妍を競っている。
特に、こはるは、何人もの客に起請文を出したり、派手に「廻し」をやったりして、えげつなく稼いでいる。一方、おそめの方は、地元出身のせいか、年季が明けても帰る場所がないと知っているので、それほど仕事熱心ではない。そのため、借金の返済を迫られると、あっさり心中を企んだりする。
一方、この相模屋を隠れ家にしている攘夷派の武士、高杉晋作(望海風斗)らは、御殿山(八ツ山橋の先)に建設予定の英国公使館襲撃計画を練っている。
そんなたくましい人々の人間模様が、幕末版「グランドホテル」のように展開する。けれど、その物語は決して悲劇ではなくて、人々の逞しさの方が運命を上回ってしまう。


というわけで、実に気持のよいサヨナラ公演だった。
相模屋のセットがまず素晴らしかった。
関東より東にある遊廓は、たいがい「廻し」という制度を採っていたそうで、複数の男に一人の遊女をあてがう。遊女が別の男の部屋にいる間、自分の部屋で順番を待っていたわけだ。そして旅籠も「廻し」がやりやすいような設計になっていて、できるだけ移動距離が短くて済むようにひとつの廊下をぐるりと五部屋が囲んでいるみたいな部屋割りになっている。それを舞台でやると死角ができるので、2階の横一列がこはるのために「廻し」部屋になっていて、それぞれの客がこはるを待っている姿を同時に客席が拝めるようになっている。
何度も観劇したら、そんな一人一人の客の様子や、階下で悲喜劇を繰り返している遊女たちの芝居を楽しめたんじゃないか、と思うが、チケット難でとてもそんな余裕はなく、残念だった。


主演の早霧は、まさに、佐平次そのものだったし、咲妃はおそめそのものだった。それ以外の言葉が浮かばない。あーだこーだ感想を書き散らかしても、結局、そこに落ち着く、神演技だった。
ラストシーン、病を治すために、ヘボン先生についてアメリカに渡ろうとする佐平次と、一緒に旅立つおそめ。二人の前途は多難であろうと理性では思うのだが、絶対にこれはハッピーエンドで、二人はアメリカで大成功しちゃうんじゃないか、そんなお気楽な空気が漂うのは、二人の空気感と演出が呼応したからだろう。
その他の出演者もみな、適材適所の大活躍だったが、やはり、この公演を最後に退団する星乃の怪演は、まず、特筆しておきたい。
おそめとのキャットファイトのえげつなさ、五人廻し三枚起請も顔色一つ変えずにやってのける面の皮の厚さ、それでいて、長州藩のお金のない連中を匿ってやる男気を示したり、高杉には心底惚れてるような色気も見せる。いい女だな~[ぴかぴか(新しい)]どこか子供っぽくて損をしていたあんりちゃんが、いい女になって卒業するんだな…と思うと、泣けて仕方がなかった。


退団者中心になってしまうが、香綾しずるの鬼島又兵衛も、大人の可愛らしさのある素敵な役だったし、おそめの心中相手に選ばれた鳳翔大の金ちゃんも最高に笑える素敵な役だった。


日本ものの雪組に、また新たな伝説ができたな、と思った公演だった。


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宝塚星組梅田芸術劇場メインホール公演「オーム・シャンティ・オーム」観劇 [┣宝塚観劇]

マサラ・ミュージカル
「オーム・シャンティ・オーム~恋する輪廻~」


脚本・演出:小柳奈穂子
作曲・編曲:青木朝子
振付:御織ゆみ乃、AYAKO、KAZUMI-BOY
殺陣:栗原直樹
装置:二村周作
衣装:有村淳
照明:笠原俊幸
音響:大坪正仁
小道具:西川昌希
インド舞踊指導:野火杏子
歌唱指導:彩華千鶴
映像:奥秀太郎
演出助手:野口幸作
舞台進行:阪田健嗣
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
録音演奏:宝塚ニューサウンズ
制作:西山晃浩
制作補:中下駿
制作・著作:宝塚歌劇団
主催:株式会社梅田芸術劇場


1月に東京で上演されたプレお披露目公演「オーム・シャンティ・オーム」を大阪でも上演することになった本作品、トップコンビ以外の配役が大きく変わったことも話題となっている。
この公演をさっそく観に行って来ました。
なお、前回公演の感想はこちらです。


内容は、1月公演の通りなので、あらすじ等は、上記感想を読んでいただければ幸いです。


ということで、さっそく、出演者感想を役替り中心に。
まず、なんといっても、ムケーシュ役に七海ひろきについて。


ムケーシュは、悪役。
どこをとっても「悪」なキャラクター。
そんなムケーシュを、まさかの、説得力のある「悪」として造形してきた「脚本の読み込み能力」と「演技力」には、脱帽。
まあ、演技力については、前から感じていたものの、芝居が盛り上がったところで歌になる、という宝塚では、そこでだいぶトーンダウンしてしまっていた。
しかし、スカピンを経ての今回、すっかり歌えるようになったかいちゃん、特に2幕のソロが素晴らしくて、そうなったことで、俄然演技にも説得力が増した。
「悪の魅力」でガンガン押してくることちゃんのムケーシュも素敵だったが、オーム・マキージャーと同じように、金もコネもない状況から、プロデューサーにまでのし上がるためには、そうするしかなかった、裏切り、蹴落とした人々の屍の上に今の自分がある、と自覚し続ける七海ムケーシュは、その半生を身に着けた凄味のようなものがあって、これまた魅力的だった。


続いて、オーム・カプールの父親、ラージェシュ・カプール役の天寿光希。1幕では、超イケメン。臨月の妻が階段降りてるのに、サポートもしないでポーズを取っているというところに、どんだけイケメンなんだ…[バッド(下向き矢印)]と、思った。彼にとって、妻も生まれてくる子供も、この時点ではアクセサリーだったのね。
2幕になると、当然、イケオジになっていて、しかも、超子煩悩。カプール家の人間関係がより濃密に、リアルになっていて面白かった。


カプール家の秘書、アンワルは大輝真琴。コミカルな芝居で、場を盛り上げていた。本役以外のダンスシーンなどでも、小柄ながら、やたら目立っていた。


スパーシュ・ガイ監督の瀬稀ゆりと。前回はアンワル役だった。どちらの役も、的確に演じていてピッタリで、しかもスターの邪魔にならない居方をしていて、尊敬しかない。それでいて存在感はあるんだよー[グッド(上向き矢印)]


パップー役の麻央侑希なんともゆる~い感じが、のオームとよい対になっていた感じ。おじさんになっても、全然変わってなくて…この人の人生が少し心配になった。
その分、リシ役の十碧れいやの方が、イケオジを目指したけど、ボンボン感の抜けてない、愛すべきキャラになっていて、素敵だった。


SP役の紫藤りゅう遥斗勇帆SPじゃない時も踊りまくって目立っていた。しどりゅーは、ちょい悪イケメンで目が離せず、遥斗くんは、30年後のオヤジっぷりが、あまりにも堂に入っていて、目がテン。これは、ちょっと目が離せない。


そして、トップコンビは、さらに息がピッタリで、現代のおとぎ話がよく似合う。


フィナーレナンバーで客席も一緒に踊るところも楽しかった。


みなさまも、暑い夏が、もっと熱くなる梅田に皆様もGO[exclamation×2]


宝塚星組シアター・ドラマシティ公演「阿弖流為」観劇 [┣宝塚観劇]

「阿弖流為―ATERUI―」


原作:高橋克彦「火怨 北の耀星アテルイ」(講談社文庫)(C)高橋克彦/講談社


脚本・演出:大野拓史
作曲・編曲:高橋恵、玉麻尚一
振付:峰さを理、平澤智
殺陣:清家三彦
装置:新宮有紀
衣装:河底美由紀
照明:氷谷信雄
音響:実吉英一
小道具:増田恭兵
歌唱指導:KIKO
サウンドプログラマー:上田秀夫
映像:九頭竜ちあき
演出助手:生駒怜子
舞台進行:荒金健二
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
録音演奏:宝塚ニューサウンズ
制作:西山晃浩
制作補:中下駿
制作・著作:宝塚歌劇団
主催:株式会社梅田芸術劇場


スケジュールの関係で、たった一度だけの観劇になりました。


が、30名の星組生を見事に使い切った大野先生の渾身の傑作、しかと受け止めました[ぴかぴか(新しい)]


あまりの感動で、友人としゃべり続け、飲み続け、翌朝起きたら、声が出なかった…という(笑)


桓武天皇(万里柚美)の時代、北方の蝦夷(えみし)を殲滅しようとする平安貴族に対して立ち上がった阿弖流為(礼真琴)たちの戦いの歴史を丁寧に描いた物語。やがて、朝廷は坂上田村麻呂(瀬央ゆりあ)を征夷大将軍に任じ、最終決戦の時が近づく。そして…。


桓武天皇といえば、平安京に遷都した天皇。遷都は794年。鳴くよウグイス平安京。
平安京は、四神相応の地らしく、そこに遷都した桓武天皇は風水的なものに頼っていたのかもしれない。とすれば、鬼門は気になるハズ。鬼門といえば艮(うしとら)。京都から見ると、それって東北地方になるらしい。まあ、そんなわけで、東北平定を命じたんじゃないか、なんて説があるそうです。
そして、桓武天皇は、皇太子・早良親王(異母弟)を廃した時に、早良に憤死され、その亡霊に怯えていたというエピソードがある人らしいです。恨みを残して死んだ人は亡霊になるので、事実上、死刑を廃止した天皇でもあるんだとか。その桓武天皇が、阿弖流為を死罪にした、しかも、京都にも入れようとしなかった、ということが、朝廷の蝦夷に対する「考え方」に繋がっている。
人間じゃないと思っていた、ということです。


だから存在そのものを不必要に恐れた。
でも、躊躇せずに殺せた。


聖徳太子の時代や、すこし下って大化の改新の時代だと、朝廷側の人間に「えみし」という名が出てきます。
この時点では、えみし=強いという好イメージだったようです。
いつから、敵という認識になったのか。
それは、もしかしたら、朝廷に仕える貴族たちの「領土問題」のせいかもしれない。「誰の土地でもない場所」だとするために、先住のえみしたちは、「人ではない=獣」ということにしてしまった。それなら奪っても問題ない。
「えみし」は、蘇我蝦夷みたいな漢字もあれば、小野毛人みたいな漢字もあるそうで、古代は、「毛人」の方が主流だったとか。
毛人だと、まるで、美女と野獣の「野獣」みたいなイメージですね。野獣は心優しく、教養もあるのに、それを退治しろ~[exclamation]とかって押し寄せるのは、まるでガストンに扇動された村人たちですね[爆弾]


実際、作品中の蝦夷メンバー、髪の毛がやたらと多かったです。(え、そこ[exclamation&question]


それにしても、出演者の適材適所ぶり、それぞれ誰一人が欠けても成立しない、見事な芝居だった。
さらに、主演の礼真琴はじめ、多くの出演者が、これまで持たれていたイメージとは少し違うキャラクターを当てられていたが、これが、意外にピッタリと嵌まっていて、座付き作者による、アテガキの妙を感じた。


以下、アトランダムに出演者感想を書きます。(一回しか観ていないので、整理するのが難しい。)


に関しては、押しも押されもしない主演っぷりで、まったく危なげがない。ナイーブな若者が似合うのかと思っていたら、骨太なツワモノもピッタリ。どこまで成長するのか、この逸材は[exclamation×2]


有沙瞳は、星組に来て初めての小劇場ヒロイン。本人イメージに合わせたのか、気の強い、芯のしっかりした女性として描かれている。たしかに、こういう人が妻でなかったら、置いていくことはできなかっただろう。そんな中にも、ヒロインらしいキラキラ感を見せ、歌声もの美声にしっかりと寄り添っていたと思う。


・史上初の征夷大将軍、坂上田村麻呂を演じた瀬央。これはいい役だった。そして難しい役でもあった。阿弖流為や母礼や飛良手の命を、彼一人がその身に受け止めるという役だから。(蝦夷を人間だと思っていない貴族たちは、彼らが死んでも、少しも気に留めないだろう。)感情を出す場面と抑える場面をきっちりと把握しての表現が素晴らしかった。


・桓武天皇の万里。男役を観たのは初めてだったが、見事な美丈夫だった。なぜだか、娘役の時より、いい芝居に思えた。


・鮮麻呂の壱城あずさ感情を抑えているしーらんって、あまり観たことがないのだが、それが、グッと胸に迫った。いい意味で、予想を裏切られた感じ。


・田村麻呂の妹、全子を演じた音波みのり小劇場のはるこちゃんは、女神だな。1月の「燃ゆる風」に続いて、今回も、女神として作品の中に君臨していた。女神だけど、芝居は神なんだよね、これが。


・紀広純を演じたのは、輝咲玲央。蝦夷鎮圧の手練れとして、朝廷からも厚く遇され、自負もしていたのに、まさか、配下の鮮麻呂に裏切られ、殺害される。それまでの傍若無人っぷりといい、裏切りへの対応といい、まさにオレ輝咲の世界でした[黒ハート]


紀古佐美を演じた夏樹れいの曲者っぷり[exclamation]御園徹成を演じた漣レイラのイケメンっぷり[exclamation]伊佐西古を演じたひろ香祐の、まさに、ここにあり[exclamation]な一連の芝居[exclamation×2]これだけ台詞しゃべるヒーローをずっとずっと待ってたんだよ~[もうやだ~(悲しい顔)]諸絞を演じた音咲いつきの最後の男役ぶり[exclamation]ここまで、かっこいい男役で終わるなんて、転向が発表されていただけに、信じられなかった。


・飛良手を演じた天華えま。これまた、めっちゃいい役やんけー[るんるん]ラストの田村麻呂との場面なんて、素敵すぎる[黒ハート]そして、母礼を演じた綾凰華この役が二番手でもおかしくない大役を、完全に自分のものにしていた。これほどの役者だったのか、と驚いた。雪組への異動は、役者の子には朗報だと思う。頑張れ[exclamation]


・その他、またまた少年役を演じた天彩峰里も、うまかった。阿奴志己役の天飛華音は、え、誰[exclamation&question]と思うほどの若手(102期)なのに、もう男役として出来ている。すごい[exclamation×2]…みんなみんなすごかった~[exclamation×2]天鈴さんとか、鮮麻呂の奥さんとか、気になる人もいっぱいいたけど、なにしろ一度の観劇では、自分の中で消化できなくて、細かく書けなくてごめんなさい[あせあせ(飛び散る汗)]
とにかく、素晴らしい公演でした[ぴかぴか(新しい)]


最後に…映像相手に剣を振るう場面は、さすがに、もう、前田慶次で納得したでしょ[exclamation&question]と、大野先生の少年心を残念に思った。
あと、馬を追って追いついて…みたいな場面も映像でやるほどのことはないと思うんですけどね。そこまでの映像じゃないし、それくらい台詞に滲ませたってわかるよ…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


宝塚月組大劇場公演 [┣宝塚観劇]

AfO1.jpg 


劇場ロビーの花は、公演をイメージしたものでしょうか。銃士隊のメンバーは、ブルーのデニム地コスチュームなので、色合いはこんな感じ。


また、1F席後方扉前で、ベルフォンテーヌという白ワインと、ベルフォンテーヌを使ったカクテル「Soleil(太陽)」を販売。


AfO2.jpg


私は、ネーミングから「Soleil」の方を選びました。ベルフォンテーヌは、ガスコン地方(ダルタニアンの出身地)のワインのようですね。 


さて、小池先生ご自身がプログラムにさっくりと書いているので、例の話は、ネタバレではない、と判断して書きますね。
冒険活劇、というジャンルになると思うのですが、いや、もう、完璧に面白かった~!
17世紀だから…なのか、NPO法人もエコホテルもマッドサイエンティストもいなくて、宝塚ファンにはおなじみのルイ14世時代の宮廷と三銃士の世界が、ごく普通に融合しているという…。三銃士は登場するけど、物語はデュマの三銃士とは別物。こういう創作世界は、ありかもしれない!と、感動した。
それぞれのキャラクターが、月組の各生徒に見事にアテ書きされ、1本物の長い物語が、まったく飽きずに進んでいく。
なにか、奇跡?手品?を見せられているような3時間だった。
小池先生すごいわーと感動しきりだったが、これ、珠城りょうが主演じゃなかったら、こんなに素直に感動したかな[exclamation&question]という気も少しする。現役生で比較するのはまずいから、たとえば、大空さんだったら…最終的にはどうにかするかもしれないけど、ハッピーなミュージカルにするために、すごくエネルギーを使うと思う。 若さと温かさとプラスのエネルギーに満ちた珠城トップの月組だからこそ、この作品は、ここまで輝けているし、さらに上を目指せそう!
ルイ14世を演じる愛希れいかも、国王として、男の子として生きなければならない「公」の部分と、女子度高い「私」の部分の演じ分けが見事で、国家のために国王でいることを強いながら、いつかきっと双子のきょうだいが現れて、彼女を解放してくれることを信じて疑わず、「私」の部分では女子として育ててくれた、母上(憧花ゆりの)、ありがとう!と思った。
三銃士も個性がハッキリしていて、みんな素敵で、ドキドキしてしまうし。その他の登場人物もすべてキャラが立っているし、月城かなとも良い役で月組デビューできたと思う。まさか、こういう役とは、途中まで思いもしなかったけど。
そんな中で、2番手として自由に泳ぎ始めた美弥るりかに瞠目した。 小池先生の見せ方も、「太王四神記」の時のゆうひさん並みで。トップより上級生2番手のせいかな。キャラもモテモテのアラミスで、華やかなヘアスタイルが良く似合う。フィナーレ冒頭のセリ上がり主題歌も堂々としていて、これはもうほんとにひょっとするかも?と、思うほどのスターとしての完成度だった。
久々の強行軍だったが、幸先のよい月組公演でした。


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公演後、大劇場隣のレストランフェリエでランチ。
まずは、オードブル。ガスパチョに浮かべた三種のマリネ。
ルイ14世の時代には、食事はスープから始まったそうで、鯛・帆立・赤海老のマリネを浮かべたトマトの冷製スープ。
三種のマリネが三銃士を思わせる。美味でした。


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メイン料理は、牛肉のポッシェ。
牛のモモ肉をコンソメで低温調理。ソースも美味でした。


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デザートは、トゥルト・ピレネー。ダルタニアンの故郷、ガスコーニュ地方、現在のミディ=ピレネーの焼き菓子。
カステラみたいな、もう少し堅い感じかな。甘さ控えめで美味でした。


東京宝塚劇場雪組新人公演(幕末太陽傳)超ミニ感想 [┣宝塚観劇]

雪組東京新人公演「幕末太陽傳」を観劇した。


新人公演担当は、栗田優香先生。初めて、担当の新公を観る気がする。


いつもは、サクサクと観劇し、サクサクと感想をアップするのに…いやー、なんというんでしょうか…スピード感についていけない…[バッド(下向き矢印)]
(寄る年波…)
そもそも、本公演がチケ難であまり観られないので、本役が誰の新公が誰みたいな部分を把握しきれず…それゆえに、ますます新人がわからず…本当にただぼーっと観ているだけになってしもうた…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


そんな中、もう、一言言えるとしたら、永久輝せあ、すげぇ[exclamation×2]ということだけです。


もちろん、演技も度胸満点だし、心の感じられる永久輝らしい佐平次だと思ったのですが、永久輝だけの特長だなーといつも思うのは、終演後のご挨拶。
気持の伝わる心のこもった挨拶は、毎回すごいと思っている。
もちろん、どの組のどの生徒も、心のこもった挨拶をしていると思う。あの瞬間、感謝以外の気持ちを持って舞台に立つ人間はいないだろうし。
でも、「心がこもってるなぁ」だけでなく、稽古中の気持ちや、終演後の今の気持ちや、これからへの気持ちを、ちゃんと言葉で伝え、それを客席の一人一人に届ける力のある生徒は、ちょっとほかに見当たらない。
(トップさんの初日・千秋楽・貸切・ツアーの挨拶は、営業面が強くなるので、気持ちを伝えるというよりは、如才ないことが大事なので、ちょっと違う側面があるし、小劇場の主演さんは、感無量の気持ちが伝わればそれでいいものなので、こういう技量は、新公の主演者に特有のスキルだとは思うけれども。)


このまま、すくすく育ってほしい生徒の一人です。


ヒロインの、おそめ役は、野々花ひまり
初ヒロインだし、これまで、どういう役をしていたかもわからない。日本もので初ヒロインとか、大変だったと思う。このメイクで大丈夫だったのか、そもそも普段の顔を知らないのでわからない。でも…かなりやばかったような…[爆弾]


高杉晋作の縣千。セリ上がりの都々逸は、心臓が止まるかと思った。まあ、さすがに、研3だもんね。全体的には、度胸があったと思う。


もう誰が誰だかわからない中、こはる役の彩みちるが、さすがに一枚も二枚も上手だったのと、仏壇屋の親子(陽向春輝・彩海せら)が可愛かったのが印象に残った。


宝塚花組大劇場公演 [┣宝塚観劇]

大劇場公演「邪馬台国の風/Sante!!」を観劇してきました。例によって箇条書きで公演感想を書きたいと思います。


  • 劇場の冷房が効きすぎていて、非常に寒かったが、もしかしたら、冷房だけのせいではないかもしれない[ダッシュ(走り出すさま)]
  • 中村暁先生の宝塚大劇場オリジナル芝居は、21世紀になって初めて…ということになる。前回のお芝居、「麗しのサブリナ」は原作ものだし、その前の「大海賊」はオリジナルだが、東京公演しかない、という変則的な上演だった[ひらめき]
  • 2017年、今世紀初のオリジナル芝居は…淡々と物語が進み、いつから盛り上がるのかな~と思っていたら、緞帳が降りてビックリ[exclamation×2]という、「愛と死のアラビア」方式だった[爆弾]
  • ショーは、さすが、藤井大介先生というか、「Cocktail-カクテル-」好きにはたまらない、ちょっと懐かしい感じのショー[るんるん]
  • プロローグの美女たち(男役5名)の美脚を覗かせた場面は、懐かしい岡田先生のレビューを思い出すような雰囲気もあり、藤井先生の円熟を感じた。これからも芳醇なワインのようなショー作りをしていただきたいです[黒ハート]

宝塚歌劇月組東京特別公演「瑠璃色の刻」観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル
「瑠璃色の刻」


作・演出:原田諒
作曲・編曲:玉麻尚一
振付:麻咲梨乃、良知真次
装置:松井るみ
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
小道具:市川ふみ
歌唱指導:山口正義
演出助手:谷貴矢
舞台進行:阪田健嗣


ドラマシティもACTも日程が合わないまま過ぎてしまいそうだったので、決まっていた予定をやりくりして行ってきました。
まずは、みやちゃん、単独初主演、おめでとうございます[黒ハート]

今回の公演、私の中では、「月組2番手となった美弥るりかの単独DC公演」という部分がとても大きくて、少々話がアレだったとしても、ご祝儀で流せる自信は最初からありました[わーい(嬉しい顔)]そしたら、思いのほか面白くて、あら、これはいいんじゃないの?と思っていたら、あまりに超うっすーいラストシーンで、さすが原田先生(笑)となりました。
まあ、でも、ご祝儀だから、あんまり文句は言わない。
(少しは言うかもしれない)

オリジナル作品の初演の場合は、自分の中の備忘として、あらすじを丁寧に書いておくのだが、原田先生の場合、それができない。なぜなら、思い出せない部分が多いからだ。人間の記憶力には限界がある。そこを埋めるのが、登場人物の感情の流れ…なのだが、なんせ原田作品は、原田先生の都合で登場人物が動くので、あれ、あの後、なんでこうなったんだっけ?となる。一度しか観ていないと、さらにその「?」は深まる。
なので、今回は、あらすじを書く自信がない。
とりあえず、時は18世紀。フランス革命前夜の時代。シモン(美弥るりか)とジャック(月城かなと)という二人の旅役者が金目のものを求めてシャンボール城に忍び込んだことから物語は始まる。城の持ち主・サン・ジェルマン伯爵の肖像画を見て二人は驚く。なんとシモンにウリ二つだったのだ。
こうして、サン・ジェルマン伯爵とその従者・テオドールに扮したシモンとジャックは、ベルサイユに入り込み、王妃や貴族たちに取り入る。そして、国王が平民出身の財務大臣、ネッケル(輝月ゆうま)を解任しようとしている事実を知り、ロベスピエール(宇月颯)に情報を流す。そこからジャックは革命家の仲間入りをするが、シモンは自分を頼りにしている王妃アントワネット(白雪さち花)を見捨てることができなかった。一方で、シモンたちのいた旅役者一座が王妃のサロンにお目見得することになり、シモンたちは慌てる。王妃は、アデマール(海乃美月)の才能に気づき、ベルサイユのバレエ団に入れてやる。しかし、アデマールは、王妃への憎しみを募らせるだけだった。
そして-
という物語だったと思う。
この「そして-」という書き方は、以降の話がよく思い出せないので、そう書いている。てか、そもそも物語があったのか、よくわからない。
色々あったけど、三人は、サン・ジェルマンの城で、新たな人生の一歩を踏み出すんですよ、とにかく[爆弾]

原田先生にはオリジナル作品を物語る能力が欠如しているようなので、そこを責めるのはやめようと思う。早くショー作家になればいいのに…とは思うけれど。
ただ、宝塚の座付演出家として、バスティーユの場面はあれでよかったのか…、本人の中で、バスティーユをどう描こうとして、どう試行錯誤してあの場面に落ち着いたのか、聞いてみたい気持ちにはなった。“敵兵を描かずに正面に向かって武器を持って踊るダンスだけで戦いを表現する”って、かつて植田紳爾先生が「ベルサイユのばら」で編み出した手法だからね。
若い原田先生ならではのオリジナルなバスティーユはなかったのかな…と。
それに軍人でも民衆でもないロベスピエールが先頭で戦うって明らかに変だし。
オスカルをセンターにした、あのバスティーユのダンスの主旨がしっかりと理解できていないから、ロベスピエールセンターのダンスシーンを考えてしまうんだと思う。当時、ロベスピエールは、議員になったばかりの青年なわけで、どうして彼中心のダンスでバスティーユ攻略が成功するんだろう…。(史実ではオスカルはいないけど、フランス衛兵隊が寝返って、軍隊としての機能をバスティーユ攻略に向けたことが、バスティーユ陥落に繋がったんだし、少なくとも、センターのいる統制の取れたダンスは、そういう背景を表現するものだと思う。)
としちゃんのかっこいいダンスを観たいというのとは、別の次元だから、それ。
かっこよく踊ってくれるのは嬉しいけど、「ベルばら」みたい…と思われると、かっこよさが半減するじゃん[バッド(下向き矢印)]
もっと考えて、考えて、場面を作ってほしい。先輩が血を吐きながら作った場面に、タダで乗っかるなよ[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
安易に翻る三色旗(7/14当時はなかった)もそうなのだが、作品作りに、若者らしい生真面目さが感じられない。たぶん、その辺が一番私の苦手なところなのかもしれない。

そんな原田作品なので、登場人物の心の動きが、脚本からは読みとれない。
にもかかわらず、最後までシモンとジャックに寄り添うことができるのは、美弥月城の演技のたまものと言っていい。
美弥は、初めての単独主演公演が、失敗の許されないドラマシティ公演となったプレッシャーなどものともせず、冒頭の妖艶なサン・ジェルマン伯爵のダンスで、まず、観客のハートをくぎ付けにする。その後、登場する、本役のシモンで、決して100%好青年ではない、けれど根っからの悪人ではない、若さゆえの未完成さを持つ、なんとも言えない魅力的な青年像を表出する。
この美弥を観られただけで、今回の観劇目的は、達せられたと言っていい。
月組への移籍後初出演の月城は、ニンである生真面目なキャラクターを生かした直情的な青年を緻密に作り上げ、雪組での経験が、月組に花開こうとしているのを強く感じた。特に、彼女の美貌が美弥とのコンビで輝いていたことは特筆したい。
ヒロイン役を多数演じている海乃は、今回もお得意の、物堅い、思い詰めたヒロインを好演。ただ、従来、宝塚でヒロインになる娘役は、「ベルサイユのばら」(原作)のロザリーのように、マリー・アントワネットに否定的な考えに凝り固まっていても、一目アントワネットに会った途端、彼女の優しい美貌にメロメロになってしまうような素直な子が多かった。アデマールは、海乃が内包する、頑なで硬質な美貌にピッタリだったが、海乃のキャラクターは、宝塚の娘役トップスターの歴史を変えることになるのか、今後とも注目していきたい。21世紀的ヒロインとして、私は推したいのだけれど…。
とはいえ、作品の求心力的には、原田先生の作劇力のせいなのか、役者の技量なのか、すべてをかっさらっていくようなアントワネットの女帝力に、全部持って行かれた感が強い。白雪のアントワネットは、まさに神がかった熱演だった。白雪あってこその「瑠璃色の刻」と言っても過言ではない。やはり、アントワネットは登場しただけでヒロインになってしまう、不滅の女王なのかもしれない(=取扱注意)し、白雪さち花の底力を侮ってはならないということかもしれない。
アントワネット好きで白雪好きな私としては問題なかったが、ヒロインが途中からアントワネットになる、という演出はそれでよかったのかどうか、原田先生にお聞きしたいものである。
ロベスピエールの宇月は、血気盛んな青年議員から、革命成功後の恐怖政治家までを、少ない出番で的確に表現していた。少し甲高い声を使って、ロベスピエールの激しい気性を的確に表現していたのには、さすが[exclamation]と唸らされた。
また、ルイ16世(光月るう)と、王弟・プロヴァンス伯爵(貴澄隼人)、そしてネッケルのやり取りの緊迫感、逆に旅役者のフィリッポ(夢奈瑠音)の的確な訛りによる抜け感は、作品に彩りを与えていたと思う。特筆しておきたい。


フィナーレの振付は、俳優・ダンサーの良知真次氏が担当した。本人の踊る姿を思わず想像してしまうような、カッコいい群舞と、ある意味新鮮なデュエットダンス。印象的な各場面だった。
装置は、原田作品の常連、松井るみ氏。今回も時代背景にピッタリの階段のセットが秀逸。サン・ジェルマンの影たちが操る衝立も、描かれたトカゲ(?)の模様を含め、効果絶大だった。宝塚公演の特異性に対応したよいセットが続いているので、今後とも宜しくお願いします[黒ハート]


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夜の大看板[わーい(嬉しい顔)]


宝塚歌劇月組博多座公演「長崎しぐれ坂」観劇 [┣宝塚観劇]

宝塚ミュージカル・ロマン
「長崎しぐれ坂」―榎本滋民作「江戸無宿」よりー


脚色・演出:植田紳爾
作曲・編曲・録音音楽指揮:吉田優子
編曲:鞍富真一
振付:花柳壽應、若央りさ
殺陣:菅原俊夫
装置:関谷敏昭
衣装:河底美由紀
照明:勝柴次朗
題字:望月美佐
音響:加門清邦
小道具:下農直幸
演技指導:立ともみ
歌唱指導:ちあきしん
演出補:鈴木圭
舞台進行:日笠山秀観


2005年星組大劇場公演の再演作。当時は、轟悠の大劇場“降臨”公演のただ中。2003年・花組「野風の笛」、2004年・雪組「青い鳥を捜して」に続く、第3弾がこの「長崎しぐれ坂」だった。そして、この公演は、伝説のトップ娘役、檀れいのサヨナラ公演でもあった。
今回は、なんと12年ぶりの再演とのこと。ちなみに12年前の感想はこちらです。同じ役で出演するには、茫然とするしかない。
さて、江戸時代の長崎には、大きな使命があった。鎖国を掲げた日本の中で、唯一、外国との交易のための港が開いていたのだ。そして、そこには、交易相手の外国人居留区があった。その中は、租界のような仕組みになっていて、治外法権。日本の役人もむやみに手が出せなかった。それを狙って、各地の無宿者が、ここに潜り込んでいた。
伊佐次(轟悠)もその一人。そして、彼の幼なじみの岡っ引きで、だからこそ、伊佐次を人の手に渡したくない卯之助(珠城りょう)も、立場のないただの下っ端になることを承知で長崎に移り住んだのだった。
人に捕えられるくらいなら、自分の手で捕縛したい…と。
でも、それは積極的な感情ではなくて、いつまでもこんな中途半端な日々が続いてほしいと卯之助は思っているようだ。
一方、長崎奉行所の面々も、他所からやってきた悪人達の捕縛には、積極的ではない。面倒この上ないと思っている。長崎で何かをしたわけではないのに、なんて捕縛しなきゃならんの[exclamation&question]的な。
それが卯之助の狙い目でもある。
ところが、ここへ、江戸から館岡(朝美絢)という男がやってきた。彼は伊佐次を捕縛するために手段を選ばないと、宣言している。この男が来たことで、それまで、それぞれの思惑を胸に互いに「なにもしないこと」で共存してきた彼らの人間関係が変化を始める。
館岡役に朝美を配したことで、初演以上の効果があったように思う。小柄な朝美がスピッツのようにキャンキャン吠えることで、それに響かない長崎という場所の特異性や、これまでなあなあで来た関係が、この男のせいで崩れて行きそうな不穏な空気が感じられる。
そこにいち早く気づいて、現状維持と新しい風、どっちに転んでもいいように、巧みに動きを始めている探り人のぼら(千海華蘭)。顔と声の幼さが気になるが、卑屈な小物キャラが憎らしいほどピタリとくる。変わろうとする空気に敢えて気づかぬような振りをしながら、全力で揺り戻しをかける卯之助との対比が鮮やかだ。
それぞれのキャラクターを際立たせるというよりは、関係性の中で自然と際立つように作って行く「月組芝居」が、古いテイストの植田作品を鑑賞に堪えるものに仕上げていく。
さて、長崎奉行の面々も、何もしていないわけではない。
悪人達が勝手に自滅して唐人屋敷を抜けだしたら、一斉に動いてお縄にする。恋人に会いたくて、でも、家族に会いたくて、でもいい。誰だってそういう不安定な心情になる時がある。それが彼らの動く時だ。館岡は手ぬるいと言うが、この方法が一番確実なのかもしれない。
ある日、卯之助は、神田明神の氏子仲間、おしま(愛希れいか)と再会し、懐かしさのあまり、伊佐次に会わせる。三人は幼なじみで、足の悪い卯之助を伊佐次とおしまが庇ってくれた、という過去がある。おしまは、廻船商・和泉屋(綾月せり)の囲われ者になっている。このキャスティングのため、「舞音」を思い出してしまうが、おしまは、舞音より年齢も上だし、色々な経験を経て、蓮っ葉でさばさばした明るい女になったんだろうなと思わせ、素敵。祇園の芸妓のように美しかった檀れいより、説得力がある。
このおしまの登場は、唐人屋敷で大事にされてお山の大将として第二の人生を過ごしていた伊佐次に衝撃を与える。一気に里ごころがついてしまった伊佐次は、荒れに荒れる。
自分が唐人屋敷を出ないのではなく「出られない」事実を突きつけられたから。
唐人屋敷には、伊佐次だけでなく、各所で悪事を働いた無宿者が多くたむろしていた。彼らは、いつの間にか伊佐次をリーダーとして、纏まっていた。が、最年少のらしゃ(暁千星)が最近反抗期のようで、ことごとく伊佐次に逆らう。
どうやら、陰でぼらが暗躍しているようなのだが、らしゃは、ぼらをいい人だと信じている。そんならしゃが伊佐次は危なっかしくて見ていられないが、一人前のつもりのらしゃは、伊佐次の干渉を拒む。
星組では、このらしゃ役を研15の安蘭けいが演じた。当然、過干渉気味の伊佐次が謎だし、母親に会いたくてぼらの嘘に騙されるのが頭悪そうにしか見えなかった。まだ新公学年で、あどけない表情のが演じたことで、母恋しな、らしゃに涙することができた。
さて、主演の
12年ぶりの伊佐次と思えない。「の伊佐次」が蘇ったように感じる。
技術的なことを言えば、年齢的なものなのか、これまでの酷使が祟ったのか、声がカスカスしていて、かつての大音声を知る身としては寂しくもなるが、その枯れた感までも含めて伊佐次だった。「帰りたい」とジタバタする姿や、一人で酒を飲んでいる場面の太ももまであらわな姿、どれも絵になる。
卯之助の珠城は、そんなと同い年の幼なじみ…というありえない設定を精一杯頑張っていた。
見た目で、それは無理があることは百も承知、それでも、伊佐次と一緒に夢を見続けたい、と縋る卯之助がちゃんとそこにいた。月組トップスターらしい素晴らしい卯之助だったと思う。
その他、水牛を演じた華形ひかる、李花役の憧花ゆりのも好演だったと思う。


上演前は、期待値ゼロだったが、思いのほか楽しめる「長崎しぐれ坂」だった。


博多座 [┣宝塚観劇]

三日間、城三昧で過ごした後は、いきなり、博多にやってきました[exclamation×2]


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博多座の恒例の大きな看板。
上演されているのは、月組の「長崎しぐれ坂/カルーセル輪舞曲」。専科から轟悠、華形ひかるが出演して花を添えている。ってか、轟は、12年ぶりに再演された芝居で、堂々の主演。


菩提山⇒小谷⇒姫路…と来て、ついに博多座[ぴかぴか(新しい)]どんどん派手になっていく気が…[わーい(嬉しい顔)]


公演だけでなく、福岡在住の友人に会えて、楽しい夜だった。
なんかホッとして、ぽやーんと過ごしてしまって申し訳ない…[もうやだ~(悲しい顔)]


宝塚歌劇宙組東京公演「王妃の館」ほか観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル・コメディ
「王妃の館」―Chateau de la Reine―
~原作 浅田次郎『王妃の館』(集英社文庫刊~


原作:浅田次郎
脚本・演出:田渕大輔
作曲・編曲:青木朝子
編曲:植田浩徳
音楽指揮:西野淳
振付:御織ゆみ乃、AYAKO
装置:大橋泰弘
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
小道具:今岡美也子
歌唱指導:彩華千鶴
映像:奥秀太郎
演出助手:樫畑亜依子
装置補:稲生英介
舞台進行:香取克英


映画化もされた浅田次郎のエンターテイメント小説が原作。この作品が田渕先生の大劇場デビュー作となる。
友の会で全滅してしまい、なんとか取れたぴあのチケットで観劇。いやー、ホント、100周年からこっち、綱渡りのチケット状況[爆弾]宝塚ファンとしては嬉しいことですが、自分が観られないほど盛況なのは、痛し痒し…[もうやだ~(悲しい顔)]

さて、「王妃の館」。とある日本の旅行代理店と、「王妃の館」としておなじみのパリのホテル、内情は火の車になっている二つの組織が結託して、ダブルブッキングツアーを計画した、というドタバタ劇である。
原作も映画も知らず、予備知識なく舞台を観たのだが、まず感じたのが、ツアーのメンバーが少ないんじゃないか[ひらめき]ということだった。それで興味がわいてすぐに原作をゲットしてみたら、けっこう面白かったので、浅田先生には、よい宣伝になったのかもしれない。
田渕先生の前作「ローマの休日」も、ほとんどの出演者がモブになっていて残念だな…と思ったが、今回もモブ出演者が多く、そんなのだったらツアーメンバーを減らすより、むしろ水増しすればいいのに…と残念な気持ちになった。デビュー前の田渕先生は、登場人物が多くて多彩なバウ作品を書いていて、どの作品も好きだったのに、原作付の最近二作には、あまり共感できていない。
原作を読んで思うのは、ひとつの部屋を二組が利用する…そのどのパターンにも、それぞれネタが仕込まれている、ということだ。
小説家・北白川右京(朝夏まなと)と編集者・早見リツ子(純矢ちとせ)の部屋には、早見がぶっちぎったライバル出版社の編集者二人(今回カット)が。これはどこでばったり出会っても、非常にまずい事態が起きる[がく~(落胆した顔)]
成金の金沢寛一(愛月ひかる)とフィアンセのミチル(星風まどか)の部屋には、カード詐欺師の丹野夫妻(凛城きら・彩花まり)。これは舞台でもあった通り、そりゃ、その道の人の部屋に成金の荷物があったら…という展開[どんっ(衝撃)]
カタブツの警官・近藤誠(澄輝さやと)とオネエのクレヨン(蒼羽りく)が相部屋で過ごすルームには、不倫清算旅行中の元OL(今回カット)。綺麗に掃除されていても、夜の世界で働いている人独特の強い香水は消し切れず、元高給独身OLにブランドまで当てられ、ドキドキの展開[あせあせ(飛び散る汗)]
そして、人生の最後に奮発してパリ旅行に出かけ、死に場所を探している下田夫妻(寿つかさ・美風舞良)の部屋には、二人が出会った定時制高校の担任の先生夫妻(一樹千尋・花音舞)が定年後の旅行に来ていて…結局二人の遺書をこの夫婦が見つけることで事態を収拾できるのだが、これは原作通りバッチリと決まっていた[ぴかぴか(新しい)]
が、おそらくは上演時間上の都合から、登場人物を削り、そのため、北白川先生の部屋に近藤・クレヨンが泊まったことから、主人公の部屋でその手のドラマが発生しない残念さがあった。
同時に、たとえセリフのない役だったとしても、ひとつの役でずっと舞台に立てる出演者は多い方がいい観点から、目立たない旅行者であってもツアーの人数を増やす、というかせめて減らさない方針にはできなかったのか…と、思った。
田渕先生なら、寂しい元OL役に愛白もあを配役したって不思議ではなかったのに。
とはいえ、丹野真夜役に、彩花を配役してくれたのは、とても嬉しかった。まさにピッタリ配役[exclamation]

17世紀部分の登場人物、ルイ14世(真風涼帆)やディアナ(伶美うらら)と、ツアーのメンバーは小説上は何の接点もない。ルイたちの物語が、この作品の入れ子の小説になっている。ホテルのコンシェルジュ・デュラン(美月悠)が語る17世紀の物語のようでいて、どこからか北白川先生の新作小説に移り変わっている…不思議な劇中劇ならぬ小説中小説になっている。
それを、北白川先生の部屋に現れる亡霊にしたのは、舞台的にトップと2番手の物語が別々に進行するのを防ぐよいアイデアだったと思う。ただ、その結果、ムノン(松風輝)の役が単なる侍従のようになってしまったのは、残念すぎた。あ、その結果、じゃないか。たぶん、素晴らしい晩餐を光ツアーが食べ、影ツアーが話をカーテンの陰から聴くというシーンがなかったのが、いけないのだと思う。あのシーン、やってほしかったなー[もうやだ~(悲しい顔)]
あと、ミチルが寛一の髪形について知らない設定にしたのも、最後に感動を盛り込みたかったのだろうが、かなり安易だったと思う。同じ部屋に生活していて、わからない方がおかしいと思った。


原作を読んでしまうと、舞台版の足りていないところ、矛盾点がスッキリするので、まだ読んでいない方は、ぜひ原作を読んでいただきたいと思った。そして、出演者の頑張りによって、ハートウォーミングな舞台が完成したことに甘えず、田渕先生にはより精進していただきたい…というか、「Victrian Jazz」「Sanctuary」「相続人の肖像」的な作品を大劇場でもガツンと見せてほしい。

さて、出演者。
主人公が北白川右京というのは、その変人度からしていかがなものか、とは思うが、朝夏は、なんだかわからないが、あのかっこうでも素敵だったので、これはもう神だと思うしかない。
一方、弱小旅行者の社長兼ツアコンという設定の実咲凜音は、北白川のトンデモ衣装に合わせて、やたら極彩色の衣装を着せられていたが、彼女のスタイルでは着こなしているとは言い難く、残念なサヨナラステージとなった。もう少し普通の服でもよかったんじゃないだろうか。
原作では、彼女は恋愛面で大きな問題を抱えていて、そのことが魅力にもなっていたのだが、この設定が排除されたことで、性格と役割がばらんばらんなイメージになってしまったのも残念。まあ、実咲のキャラクター的には、不倫地獄より、若き社長として会社を潰したくない一心…という方が、似合いだとは思った。
ルイ14世の真風は、北白川との対話のシーンができたことで、原作以上に生き生きと国王である自分と、恋を貫きたい自分の間で葛藤する姿を描いていた。
愛月にどうしてあの役がついたのか、全然理解できないところだが、それでも、金沢は非常に魅力的でハートフルなキャラクター。ラストシーンでは彼の太っ腹な性格ですべてが解決する。だからおいしい役ではあるのだが、二枚目ではない。そもそも好感度も低めな人物として描かれている。なのに…というラストのカタルシスがあるわけで、二枚目の愛月が演じることで、なんとも中途半端感が残った。
(二枚目は二枚目なのだが、ぜったい嵌まりそうだなーと思う私的配役は、星組の壱城あずさである。)
ミチルの星風は、まあ、これは愛月にも言えるのだが、キタキリスズメが残念すぎる。金持ちアピールは絶対必要だと思う。そこに序列があろうとなかろうと。
てか、旅行ものなんだから、もっと衣装を出せ[exclamation]ツアコンだけが着替えるって、おかしいでしょ[exclamation&question]
ディアナ役の伶美うららは、もっと素っ頓狂なキャラをそのまま残してもらえればよかったのに…と思ったが、一度きりの観劇なので、実は詳細を忘れているのかもしれない。
澄輝は、パッと見、澄輝とはわからない位の変わりようで、単純でゴツい警官役を見事に演じ切っていた。蒼羽は、ゲイバーのホステスという非常に難しい役を自然体で演じていて、決して奇をてらっていないところに好感が持てた。
専科の一樹の芝居が素晴らしかったのと、それをセリフが少なくてもちゃんとフォローしていた花音に感動した。
わりと淡白な脚本が、出演者の力量で熱い舞台になったと思う。
中堅どころがモブなのに熱く頑張っていたのが、忘れられない。


スーパー・レビュー
「VIVA!FESTA!」


作・演出:中村暁
作曲・編曲:西村耕次、鞍富真一、青木朝子、手島恭子
音楽指揮:西野淳
振付:羽山紀代美、御織ゆみ乃、若央りさ、平澤智、AYAKO
装置:新宮有紀
衣装監修:任田幾英
衣装:加藤真美
照明:勝柴次朗
音響:加門清邦
小道具:太田遼
歌唱指導:彩華千鶴
舞台進行:香取克英


ショーは、ソーラン宙組がすごかった。特に銀橋での伶美のオトコマエなことと言ったら[exclamation×2]
ヴァルプルギスは、「はげ山の一夜」を使用した場面だったが、音楽がもっとテンポよく進行してくれたらなーと、ディズニー映画「ファンタジア」のファンとしては、ちょこっと思ったりした。
それにしても宙組でここまでパワフル&ダンサブルなショーが観られるとは[ぴかぴか(新しい)]トップ次第で舞台は変わるんだな~と思うし、だから数年でトップは交代するんだなーとも思った。寂しいことではあるが。
伶美のロケットSが、こちらはキュートで素敵だった。(かなりファンらしい…)
そして、これが最後になってしまったトップコンビのデュエットダンスの素晴らしさは、夢のようだった。